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(1) 最も重要なのは突然の転覆時でも遭難の発生を知らせることが出来ることであり、その発信は遭難状況に適応して、自動的に行われるか、または人手による場合でも通信の専門家によらない簡易な方法で行なうことが出来る必要がある。更に余裕のある場合は、より詳しい情報を提供できることも重要である。そして受信は、すべて目動受信を原則とすることである。
(2) 上記の遵難通信には少なくとも遭難船舶の船名の他に国名が必要であり、その他に遭難の種類などを含むことが望ましい。
(3) 次に遭難船舶の地理的な位置を知ることが必要である。遭難通信に遭難位置を含めることは、余裕のある場合には人が位置データを入力することも可能であるが、自動化には、いろいろと問題も多い。遭難船側に負担をかけないで遭難の位置を知る最も簡単な方法に、受信側で発信源を測定する方法があり、そのようなシステムを全世界的に利用することが考えられている。
(4) 捜索救助機関と遭難船舶及び民間船舶を含めた救助船との間、並びにそれら舶舶相互の救助に関連する調整通信が必要である。これらは船舶の一般通信の強化にも通ずることになる。
(5) 救助の現場での通信が必要であり、これらは遭難船と救助船、遭難船と生存艇、救助船と生存艇、救助船同士、生存艇同士等の通信で、専らVHFの電話によるのが適当であり、国際VHFの使用が好ましい。
(6) 救助船が遭難現場に近づいた時に、遭難船または生存艇を発見し、それに近付く方法が必要で、これをホーミングという。
(7) 遭難の発生を付近航行中の一般船に知らせたり、遭難予防的な情報を知らせるための海上安全情報の通報も必要で、捜索救助情報、航行警報、気象警報等の海上安全情報(MaritimeSafety Information:MSI)を放送して自動印字受信することが要求されている。
(8) その他、国際VHF海上移動無線電話も衝突防止の観点から、GMDSSの一部として必要である。GMDSSにおいて、前項に述べたような各種の新しい通信システムを制度化するに当っては、コンピュータ技術を含むディジタル技術、マイクロ波を含む超短波技術と宇宙通信枝術が最大限に利用されている。そして、それらを利用した各種の装置は本船用と、生存艇用及びその両者に適用されるものに分けられている。生存艇用の装置は、救命設備の一部として規定されているが、本船用として本船に設置されていて、共同利用として生存艇に持ち込むようになっているものもある。船に乗り組むすべての船員は勿論、船主も、またこれらの装置の保守に携わる方々も、夫々の立場に応じ、GMDSSについての知識を充分に理解していることによって始めて、新しい遭難安全システムの機能が発揮されるものと信ずるものである。

 

 

 

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